嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第74話:シャフラー買収劇(その1)

シャフラー自動車ビジネス全体概要

橋本知恵院はエンジン用動弁システムでバルグワーナーとシェア1位2位を争っている。(どちらも自分が一位だと言っているが、第三者となった目で見るとどっちもどっちでカウントの仕方によって変わって来るくらい僅差だ)世界3位4位はというとiwis(第41~43話参照)とシャフラーだ。シャフラー自信は年商1.7兆円以上ある巨大企業で主にベアリングとか車両駆動系を扱っていて(写真参照)日本で言うとNTNとかNSKとかのイメージだ。何故その巨大企業が動弁系チェーンをやる様になったかと言うとややこしいストーリーがある。

元々動弁系がローラ(ブシュ)チェーンだった時代は橋本知恵院、iwis,RENOLDの3強があり、その下にフランスのSACHSというチェーンメーカーがあった。2005年にまずRENOLDがSACHSを買収、でも動弁系がサイレントチェーン化してそれを作れないRENOLDは持て余し動弁系チェーン事業(具体的にはフランスの元SACHSカレー工場)を売りに出した。橋本知恵院も何人かカレー工場まで足を運んだのだが、フランスの片田舎で赤字でボロい工場だったらしく降りた。そこで買いに走ったのがシャフラーだ。シャフラーは2005年位から独自にファインブランキングによるサイレントチェーンの開発を進めていたので食いついた様だ。買収後2013年に工場を建て直すほど投資をしたらしいが、結果的に2019年5月に橋本知恵院に動弁チェーンビジネスを売りたいと申し入れて来た。

この時最初に連絡を受けたのは恭作で、その数週間後に故大腹社長と砂糖功と恭作の3人で品川に出向き、シャフラーのエンジン部品事業部長のチェロキーさんと極秘に会っている。その概要は動弁系チェーンビジネスではたかだか年商300億円弱、エンジン部品事業から見て5%,シャフラー全体からみると1.5%程度の規模で、今後の電動化を考えると売却して資金を電動化ビジネスに回したいというシャフラー本部の意思決定があったそうだ。(現場を預かるチェロキーさんは非常に残念そうだった。橋本知恵院もそういう会社組織になって来たが、現場でビジネスを知らない本部の連中が目先の金儲けだけで訳の判らない意思決定をするという欧米型組織の典型的悪例だ。この辺りの話は裏の裏ブログでも書こうと思っている)

売り先候補は独占禁止法の関係でバルグとiwisには売れず(橋本知恵院は欧州でのシェアが低いので問題ないとの事)ちゃんと工場を運営していけるのは橋本知恵院だけだという事だった。橋本知恵院が買えないなら何処かのファンドに売るしか無いが、実務をやっている立場では残された者たちのことを考えるとそれは避けたいとの意思だった。条件次第では橋本知恵院にとってかなり美味しい話(=いきなりダントツのシェア世界一になる)で我々3人は大乗り気だった。

-いよいよ次回最終話-