嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第51話:アジア進出(韓国編その1)

2006年から量産納入が始まった現代自動車アバンテ(ガンマエンジン)

アジア進出はタイ設立の2年後に上海設立という順序だったが、中国は2011年から検討が始まった一般産業事業部の天津工場設立話と一緒に書くつもりなので韓国設立の話を先に書くことにしよう。

韓国は第32話の続きになるのだが、そこでは現代自動車との関係が回復してトヨタの4気筒エンジンシリーズ(NZ,ZZ,AZ)を参考としたチェーン動弁機構エンジン開発に参入できる事になったという所まで書いた。確かそれが2002年頃の事だった筈だ。ガンマ1.6Lとシータ2.4L,そしてラムダV6の3エンジンへの開発参入が始まったのだが、バルグワーナーがサイレントチェーンで既に先行していた。「何故トヨタはサイレントチェーンを使わないんだ?」という現代自動車(特に技術部長の文さん)の質問に対してチェーン伸びに関する大きなプレゼンを恭作自身が行った。それまでの一連のトヨタでの経験が役に立った事は言うまでもない。簡単にまとめると「伸び耐久性を重視するならローラ/ブシュチェーンだし、音を重視するならサイレントチェーン。音は遮音すれば解決するが伸びは難しい場合がある。トータルコストを比較するなら遮音(ローラ/ブシュチェーン)を選択した方が良いし品質上も安全である」という内容だったと思う。そして現代が出した結論はGDI(直噴タイプ=ガソリンダイレクトインジェクション)エンジンはローラ/ブシュチェーン、MPI(普通のタイプ=マルチポートインジェクション)はサイレントチェーンという事になった。プレゼンの中にGDIはスーツ(すす)とガソリンそのものがエンジンオイルの中に多く溜まりやすくチェーンが伸び易いという内容が含まれていたからだ。当初はGDI(ローラ/ブシュ)=橋本知恵院、MPI(サイレント)=バルグワーナーという受注分担も決まった。(今はかなりの割合でどちらも橋本知恵院が受注している)

細かい開発実務は役員になった後なので恭作はあまり携わっていないが、音で色々苦労しながらも2006年位にガンマとラムダが量産化された。1996年にリンさんと朝立君と恭作の3人で始めた現代自動車攻略は10年かかってようやく花が咲いたのだった。(2006年と言えば橋本知恵院初のパワードライブチェーンATC700量産化もこの年だが、チェーン自身の開発からは10年以上かかっている。何事も10年以上続けないとものにならないという事だと思う。そういう意味ではクラッチビジネスなどまだ10年早いわ!)

この頃から韓国人エンジニアを中間採用で2人採用したり(そのうち1人は辞めてしまったが残ったもう1人がリム君だ)韓国語を使える派遣社員JKさんを雇って通訳や韓国語教室の先生をやらせたりした。この時はまだ橋本韓国設立前なので日本からの輸出だったがシータエンジン量産化予定の2009年迄には韓国での現地生産化を現代自動車から迫られていた。-続く