嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第45話:ディーゼルエンジンクレーム

BMWから供給されたiwisチェーン搭載の欧州トヨタディーゼル

マツダ2.2Lディーゼルのバランサー駆動チェーンシステム

 

ディーゼルエンジンとチェーンの相性は良く無い。恭作が経験した量産エンジンのトラブルだけでも起亜バランサーシステム、日産YDタイミングシステム,三菱4M40タイミングシステムがあり、ついでにiwisも対BMW向けタイミングチェーンでやらかしたらしい。(このBMWディーゼルは何とガソリンエンジンと共通の8mmピッチブシュチェーンだったらしい。そりゃあ伸びるわな。このエンジンは欧州トヨタにも供給されていて-写真参照-その筋から聞いた話だ。BMWとiwisがどう決着したのか知らないが)

YDはガイドに製造不良があったのでリコール負担はしょうがなかったものの、ガイド以外にも異音問題が山積していてその原因はオイル消費過多による油圧不足だったのは恭作本人が実験に立ち会って確認した。下の2例を含めて根本的原因はエンジンオイルの市場での劣化と消費を予想・管理できなかった事だ。また、その分野はカーメーカーの責任なのだがそれを明確にしていなかった日本的ビジネスの形態(契約が曖昧)にも問題がある。

1番酷い例は第31,32話で触れた起亜のトラブルで、同時に進めていたトヨタディーゼルバランサーシステム(多分CDエンジンで量産はギア駆動となった筈だ)が非常に良く似たシステムでどうしても上手くいかず開発途中でギブアップした経験から、恭作からダメでギブアップを申し入れたのに起亜側は耐久テストでパスしたからという理由で強引に立ちあげた。ここでちゃんと免責契約を交わしていれば良かったのだが、日本的信用重視/曖昧スタイルに流されてしまい結果的に7000万円の解決金を払わされ、且つその直後に起亜は現代に買収され橋本知恵院の悪評だけ引き継がれた。ちなみにディーゼル4気筒エンジンの2次バランサーをチェーン駆動にして無事量産しているのはマツダの2.2Lだけしか知らない。(確かバラが買い調達でシステムはマツダ自身がまとめた筈だ。苦労したと思う。)

三菱の4M40系はトラック(キャンター)では余り問題が出ていないのにパジェロやデリカでクレームが多発した。おそらくこれはエンジンの適用の違い(トラック用はふそうが適用、パジェロ/デリカは三菱自動車が適用。タイミングシステムはふそうによって開発されたものを三菱自動車が流用した筈だ)とメンテナンスの違いだろうと三菱のモノわかりの良い人達はわかってくれていた。ただ、このトラブルではエンジンを降ろさないでチェーンを交換出来るキットをDS課の宴会男村汰君が開発してくれてクレーム費用はかなり助かったが。これはDS課では宴会以外での彼の唯一の貢献だったかも知れない。

要するにQS/TSの品質システムで言うところの「妥当性の確認」が不十分のまま発売した事がすべての事例に言える事だ。ここを部品メーカーが負う事は不可能だと思う。せっかくこの3例だけでもかなり高い授業料を払ったのだから、以後は同様なトラブルをリピートしない事を願う。特にディーゼルはヤバい。(現代自動車がそこまでわかってディーゼルはベルトという基本方針を打ち出したのなら凄いと思う。10万kmとかで交換すると決めておけばエンジンオイルは関係ないのだから)

ディーゼルエンジンと言えば日産で面白い試みもした。V6ディーゼルの開発で、伸びて壊れる事を前提で6.35mmサイレントチェーンを試作納入したり(1000km毎にオイル交換を条件としたがとても静かで良かったらしい),その後ブシュ入りサイレントチェーンを試作納入したりした。ピッチが9.525mmになってしまいスペースと価格がネックになり、且つルノーとの開発分担でお蔵入りしてしまったが。