嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第71話:上海裏事情その1:壱川さんとの約束と上海総経理人事

鳥薗君お気に入りのGP(Garden Palace)

恭作が山王工場に帰任する直前に壱川元専務(この時は上級顧問)が個人的に送別会(と言っても2人だけ)をやってくれた。その酒席で懇願されたのはプロローグで書いたシャンパンタワーを注文した上海総経理の鳥薗君を精機事業に返してくれというものだった。精機事業から自動車に移って来たのは黒河夫妻もそうだが彼らの方が古く、鳥薗君は一回US橋本の精機事業担当駐在員になり、その時の小宮崎さんとの縁で自動車に来たのだ。そして橋本UKの駐在員を経てちょうど恭作が自動車に帰るタイミングで上海総経理で駐在する事になっていた。壱川さんの言う所の理由は精機事業の幹部職で英語が堪能な人材はゼロで、この国際化の世の中でそれはまずいという事だった。全社的に見ればその通りで基本的に納得したもののこのタイミングでは無理なので少なくとも駐在最低期間3年は待ってくれと返事したが本当に3年後約束を守る自信は無かった。

鳥薗君が上海の総経理になった頃は中国自動車市場の急成長期で、日本や中国の外勢先から調達して多少の付加価値を付けて(組み立てなど)売るという商売で高利益を得ていた。しかし3年後はその成長度合が止まり、在庫を増やす事で高利益になっていたカラクリが明らかになり、且つ総経理は製造に余り関心が無く製造品質(組み立て)は最悪で品質クレームが多発していた。流石に恭作も「これはまずい、諸悪の根源は総経理にある」という周りの意見に納得して例の3年前の約束を実行する事により、すんなりと鳥薗君を帰国、精機事業に移動させる事に成功した訳だ。代わりの総経理は製造畑の和打君にお願いした。この人事は大成功して上海の品質は格段に良くなった。

ちなみにプロローグのシャンパンタワーは鳥薗君が自身で企画した本人の送別会の2次会での事で、この時新総経理の和打くんと董事長の恭作は別の所で食事していた。たまたま二次会で行ったGPというカラオケクラブに鳥薗君も来ていて和打君と恭作が無理矢理合流したのだった。-続く-