嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第60話:天津工場開業と派閥争い事件

天津第一工場

とりあえず天津工場が完成したのは2012年の夏近くで、恭作が1人で天津に乗り込んでから1年余りというスピードだった。その頃には日本人総経理も決定していて技術系及び人事系駐在員と工場長の山部君との日本人は4人体制でスタートした。現地人スタッフも続々と採用が進み設備も導入されていって会社らしくなり正式にはそのまた一年後の開業となった。山王工場に後に出向したナンチャンもその時の採用だ。特にトヨタの天津工場のいくつかある内の一つの工場長だったハウさんまで採用出来たのは第58話で登場したヤンさんやシエさんの人脈のおかげだろう。しかしこれらの現地人と当時の総経理は上手くいっておらず、一年後に事件が起きた。

会社が運営されて一年以上も経つと色々ドロドロした問題が出来てくる。特にアジアは韓国も含めてそうみたいだ。(タイは担当役員で無かったので良く知らないが余りトラブルの話は聞こえてこなかった。社長の小宮山さんが上手くやっていたのかも)日本人総経理と日本人総務駐在員と中国人女性総務部長が仲が良く、中国人製造部長率いる現地人達から反感を買っていたようだ。簡単に言うと金に厳しすぎる総経理派閥と多少は自由にやりたい現地人派閥の争いだ。例えばこの総経理のやり方だとここ数話書いている京棚部のトップとしての接待も全てアウトという事になってしまう。会社に損害を与える様な金銭の受授はまずいがアジアなんだから多少の事は目をつぶらないと上手く行かない。詳しくは書けないが、こんなに天津工場が早く出来たのもそういう裏世界の活動もあったからだ。またそういう性格の総経理はヤンさんとも上手くいく訳も無くトラブル続きだった。因みにヤンさんはこの天津工場に数億円の出資をしている共同経営者だ。

事件はそんな中起きた。あろう事か京棚部の恭作の元に国際宅配便の封筒が届き、中身は工場内を含めた場所での中国人女性総務部長(亭主持ち)と日本人総務駐在員(独身)の不倫イチャイチャ写真だった。中にはその女性の下着姿の写真まで含まれており、生々しいモノだった。文書は中国語で書かれており当時恭作のスタッフだった且君(その後自動車に移動した)に訳してもらったが、「こんな事してる総務部は許せない、董事長(=恭作)なんとかしてください」という内容だった。当然、恭作は尾左社長に報告し、その日本人駐在員は強制帰国となった。(後日談を言うとその女性は離婚し、その駐在員と結婚した。総経理も比較的早く交代となった。問題のハウかさんも色々あって辞めてしまった。)

そんなんで天津工場は第57話で書いた様に過剰設備投資による大赤字もあり散々な船出であった。まともになったのは恭作が山王工場に戻り自動車事業が合流し、総経理も二代目の長井君になってからだ。