嶋恭作の裏45年史

この話はフィクションであり登場人物とエピソードは全て架空のものです

第11話:事業部暗黒時代からの大逆転神風-その4:初めての海外出張3

トレビの泉

その次に訪問したのはイタリアのビレリー社(タイヤで有名だが当時は動弁機構用ベルトもやっていた)だがこちらは恭作の専門外で太門さんのカバン持ちに徹したので仕事の話は覚えていない。ビレリーのベルト工場のあるペスカラという漁村で仕事を終え、この旅最後の宿泊地ローマに向かった。イタリアは現地事務所が無いので太門さんと恭作は完全に観光客の二人連れと化し、観光名所のトレビの泉に向かったが、ここから事件は始まった。

2人でトレビの泉に向かっていると中東から観光で来ているというオッサンが英語でトレビの泉までの道を尋ねてきた。英語の得意な太門さんは丁寧に対応して感謝されそのままそのオッサンとは別れた。トレビの泉から帰ってきた2人はまた偶然にそのオッサンと出会った。’いやあ、さっきはありがとう。おかげでトレビの泉に行けたよ。御礼にお茶か食事でも奢るよ’と言われた。人の良い太門さんは快諾してその近くのカフェに入ってお茶することになった。カシス系のカクテルをご馳走になって益々そのオッサンと太門さんは盛り上がっていき、何処か安全な店に飲みに行こうとなった。オッサンはウェイターを呼び’この近くで安全に楽しく飲める店はないか?’と尋ね、近くのクラブを紹介してもらった。(後で考えるとこのウェイターもグルだったのだが)店はいわゆるキャバクラで美人の女の子もそれぞれの客につく。数時間楽しんでいざ会計という時にはオッサンは既に消えていて、請求書は70万リラ(日本円で約10万円)だった。流石に太門さんもこれには頭に来て店に文句を言うといきりたったが、怖いあお兄さん達(しイタリアンマフィア?)が登場して諦め2人の有り金(当時はクレジッドカードは一般的では無くトラベラーズチェックという小切手)を叩いて店を出た。本当に成田から帰る分の現金しか残らなかった。初めての海外出張はとんでもないラストで終わったが、この後帰国すると欧州ビジネスだけで無く国内の鉄製動弁機構ビジネスも急再燃して超多忙時期を迎えることになった。ちなみにこの詐欺手口は7~8年後に地球の歩き方という観光ガイド本に紹介されたり、日産の設計課長が全く同じ手口に引っかかっていたと聞かされたり、かなりの日本人が被害にあった事がわかった。